生体力学計測・解析を加速する新技術開発
B02-1
in vitro神経管再構築によるNeural Crest出現機序の解明
本研究課題では体軸形成を行うプラットフォームを用いて、in vitroにて神経管を再構築します。またこの神経管形成時に発生するNeural Crest(NC)細胞の出現メカニズムに焦点を当て、メカノケミカルフィードバック機構が如何にして局所的なNC細胞の分化を導いているのか解明することを目的としています。
B02-2
定量細胞モデルによる血管新生の秩序力学の解明
血管新生は、組織形成と栄養供給に重要なプロセスであり、細胞集団が1次元状の組織を維持しながら成長します。血管内皮増殖因子(VEGF)は血管新生を誘引しますが、後続のstalk細胞をレーザ切除してtip細胞を孤立させても、tip細胞はVEGF環境下においても移動しません。Tip細胞がstalk細胞を引っ張っているのでしょうか。stalk細胞がtip細胞を押しているのでしょうか。本研究プロジェクトでは、画像解析と力学的要素を導入した数理モデルにより、血管新生時の組織形成の根本原理を理解することを目的としています。定性的なモデルでは、組織の動きを実験データと整合的に記述することに限界があるため、本研究では、定量的な細胞モデルを構築し、血管新生の再現と力学的視点で原理解明を目指します。
B02-3
細胞の遺伝子発現と力学的境界条件が織りなすオルガノイドの生体秩序
本研究では、多細胞系における個々の細胞の機械特性(細胞表面張力)と遺伝子発現を同時かつ網羅的に解析する新しい測定法の開発を目指します。そして、器官形成や組織の再構築における細胞の遺伝子発現と機械特性の統合的な解析を通して、器官・組織スケールの協調的な機械特性制御の分子メカニズムを解き明かします。
B02-4
上皮細胞の力学パラメータの階層ベイズ推定手法の開発と応用
生体秩序形成の力学制御を解き明かすには、細胞集団の力学モデルのパラメータを実験データから精度高く評価することが必須です。しかし、既存のパラメータ評価手法は細胞の多角形分布などの要約統計量を用いた間接的な比較に留まっており、直接的な評価手法の開発が待たれていました。私たちは最近、実験データに基づいて力学モデルの数式を設計し、データが持つ情報から直接、パラメータを高速かつ高精度に推定する手法を報告しました (Ogita et al. PLoS Comput. Biol., 2022)。本研究では、力学パラメータ推定法をベイズ推定で再定式化することで、より多くの情報を反映した統合的な推定を実現します。拡張した手法を領域内で取得された画像データに適用し、細胞の力学パラメータを数値指標として提供します。さらに、力学パラメータと細胞の動態や極性の相関をもとに、理論・実験の両面から、力学パラメータの機能的意義を明らかにすることを目指します。