研究概要
私たちのからだは、たった一つの受精卵から始まり、肺・腎臓・腸など固有の形態パターンへと成長していきます。そのどれもが非常に複雑な形をしているにも関わらず、からだの中で再現よく作ることができるのは、細胞が遺伝子によって規定されているからだけではなく、集合体として細胞がお互いにコミュニケーションを取り合って、場を高精度に作り上げています。そのため、からだの外でこの複雑な臓器を作り上げるためには、どのような環境でどういった条件が必須であるか、体外環境の設計とそれを体外の微小な環境で実現するための制御技術が非常に重要であると我々は考えています。設計論を構築するためには、細胞が行っている周囲環境とのコミュニケーションを理解し、多細胞としての集団の秩序を明らかにすることが必須となってきます。
そこで、我々の研究室では工学・生物・情報など複合技術を駆使して、1)培養環境を時空間的制御・計測可能な実験プラットフォームの構築を行い、2)細胞の自律形成システムを数理モデルで表現し理解した上で、3)場を時空間的に制御することで細胞に望みの方向へ成長させるための方法論の確立を目指して研究を進めています。
経歴
ケンタッキー大学機械工学学科にて修士号を取得後、自動車メーカーにて生産技術者として4年間従事。2009年に退職後、博士課程に戻りマイクロロボットの研究室にて博士号を取得。JSPS海外特別研究員としてUCLAにてTissue engineeringの研究に携わった後、2014年より大阪府立大学テニュアトラック特別講師、2019年より現職の理化学研究所理研白眉研究チームリーダーとして、体外で体内環境の再構築を目指して研究を進めている。
関連業績
- Gradient to sectioning CUBE workflow for the generation and imaging of organoids with localized differentiation
Isabel Koh, Masaya Hagiwara
Communications Biology, 6, 299, 2023.
DOI: https://doi.org/10.1038/s42003-023-04694-5 - Localization of Multiple Hydrogels with MultiCUBE Platform Spatially Guides 3D Tissue Morphogenesis In Vitro
Kasinan Suthiwanich, Masaya Hagiwara
Advanced Materials Technologies, 8, 4, 2023.
DOI: https://doi.org/10.1002/admt.202201660 - 3D Culture Platform for Enabling Large-Scale Imaging and Control of Cell Distribution into Complex Shapes by Combining 3D Printing with a Cube Device
Atsushi Takano, Isabel Koh, Masaya Hagiwara
Micromachines, 13, 156, 2022.
DOI: https://doi.org/10.3390/mi13020156 - Weakening of resistance force by cell-ECM interactions regulate cell migration directionality and pattern formation
Masaya Hagiwara, Hisataka Maruyama, Masakazu Akiyama, Isabel Koh, Fumihito Arai
Communications Biology, 4, 808, 2021.
DOI: https://doi.org/10.1038/s42003-021-02350-4 - Engineering approaches to control and design the in vitro environment towards the reconstruction of organs
Masaya Hagiwara, Isabel Koh
Development, Growth adn Differentiation, 62, pp. 158-166, 2020
DOI: https://doi.org/10.1111/dgd.12647