研究概要
私たちの研究室では、「ゲノム-細胞-組織」といった多階層構造からなるシステムが、胚発生の過程でどのように自己組織化的に多細胞生命の秩序を確立していくのか、ということを理解することを長期的に目指しています。我々の体は適切な「形」と「機能」をもった器官が組み合わさることによって成り立っており、これら器官は発生過程に形成されます。各器官の「形」は、細胞集団である組織が秩序だって変形を繰り返すことにより作り上げられます。また、器官の「機能」は細胞の性質に依存しており、器官ごとに細胞は適切に分化し、生理的役割を発揮するための機能を獲得します。つまり、器官の構築には適切な遺伝子発現・細胞分化(生化学的現象)と秩序立った形態形成(物理的現象)の2つのプロセスが同時に進行しています。我々はこれまでに、ショウジョウバエ胚発生をモデルとして、細胞運命決定による形態形成制御に加えて、その逆の制御、上皮組織シートの変形による細胞分化制御の存在を明らかにしてきました。そして、生化学的現象(遺伝子発現・細胞分化)と物理的現象(細胞・組織形態形成)の相互クロストークに基づく自律的秩序化システムが、正確な胚発生の進行を担っていると考えています。また、ゲノム階層の時空間ダイナミクスを1細胞レベルで詳細に観察することために、ショウジョウバエ胚の1細胞遺伝子発現アトラスの構築も独自に進めています。シングルセルゲノミクスに加え、ショウジョウバエの遺伝学やイメージング技術を駆使し、ゲノムワイドかつ全胚スケールでの多階層クロストーク機構の解明に取り組んでいます。
経歴
2003年に北海道大学理学部生物科学科卒業、2008年に奈良先端科学技術大学院大学・バイオサイエンス研究科博士後期課程修了、博士号を取得。2007-2008年度 JSPS特別研究員(DC2, PD(基礎生物学研究所))、 2009-2015年度 理化学研究所・発生再生科学総合研究センター 研究員(2012-2014年度 理研基礎科学特別研究員)を経て、2015年12月より京都大学大学院生命科学研究科/K-CONNEXにて特定助教として研究グループを主宰。2022年度より同特定講師。2023年度より理化学研究所 生命機能科学研究センター チームリーダー
関連業績
- Spatiotemporal remodeling of extracellular matrix orients epithelial sheet folding
Alice Tsuboi, Koichi Fujimoto, Takefumi Kondo
Science Advances, Vol. 9(35), eadh2154 (2023)
DOI: 10.1126/sciadv.adh2154 - Single-cell transcriptome atlas of Drosophila gastrula 2.0
Shunta Sakaguchi, Sonoko Mizuno, Yasushi Okochi, Chiharu Tanegashima, Osamu Nishimura, Tadashi Uemura, Mitsutaka Kadota, Honda Naoki, Takefumi Kondo
Cell Reports, Vol. 42(7), 112707 (2023)
DOI: 10.1016/j.celrep.2023.112707 - Model-based prediction of spatial gene expression via generative linear mapping
Yasushi Okochi, Shunta Sakaguchi, Ken Nakae, Takefumi Kondo, Honda Naoki
Nature Communications Vol. 12(1), 3731-3731 (2021)
DOI: https://doi.org/10.1038/s41467-021-24014-x - Two-step regulation of trachealess ensures tight coupling of cell fate with morphogenesis in the Drosophila trachea
Takefumi Kondo, Shigeo Hayashi
Elife Vol. 8, e45145 (2019)
DOI: https://doi.org/10.7554/eLife.45145 - Mechanisms of cell height changes that mediate epithelial invagination
Takefumi Kondo and Shigeo Hayashi
Development Growth and Differentiation, Vol. 57(4), 313-23(2015)
DOI: https://doi.org/10.1111/dgd.12224 - Mitotic cell rounding accelerates epithelial invagination
Takefumi Kondo and Shigeo Hayashi
Nature, Vol. 494, 125-129 (2013)
DOI: https://doi.org/10.1038/nature11792 - Small Peptides Switch the Transcriptional Activity of Shavenbaby During Drosophila Embryogenesis
T. Kondo, S. Plaza, J. Zanet, E. Benrabah, P. Valenti, Y. Hashimoto, S. Kobayashi, F. Payre and Y. Kageyama
Science, Vol. 329, 336-339 (2010)
DOI: https://doi.org/10.1126/science.1188158 - Small peptide regulators of actin-based cell morphogenesis encoded by a polycistronic mRNA
Takefumi Kondo, Yoshiko Hashimoto, Kagayaki Kato, Sachi Inagaki, Shigeo Hayashi and Yuji Kageyama
Nature Cell Biology, Vol. 9, 660–665. (2007)
DOI: https://doi.org/10.1038/ncb1595